「ほ、本当にこんなすごい場所に住んでいいの……?」

 部屋に通されて、勧められたソファに腰掛けて、果歩は目を白黒させてしまった。

 戸惑っていたのは訪ねてきた当初から、いや、「一緒に暮らそう」と提案されたときからだったが、おろおろする気持ちはちっともなくならなかった。

 それどころかどんどん強くなっているくらいだ。

「もちろんだよ。一緒に暮らせるんだから。むしろ少し狭いくらいかもしれない」

 トレイにお茶を乗せて運んできた翔は、なんでもないように、さらりと言う。

 だがそんなことがあるものか。

「そんなことないよ!?」

 だから果歩はそのまま言った。そもそもこんなすごい部屋、今まで入ったこともないのだから。

 ここしばらく帰って住んでいた実家は一軒家だったから、部屋数はそりゃあ少し減る。

 でも一部屋が大きいのだし、部屋が少ないなんて言っても、2LDKあるのだ。

 三人で住んだって、ちっとも狭いことなんてないだろう。

 この部屋は都内の、空港からほど近いエリアにあるマンション。

 もちろんこれほどのスペックなのだからタワーマンションだ。

 最上階でこそないが、かなり高い階に位置している。

 それに空港から近いということは、エリア的にも高級住宅地。

 これからこんなすごいところに住んで、私、大丈夫かな。なじめるかな。

 そこまで心配になった果歩だった。