「俺は果歩と今度こそちゃんと付き合いたい。順番を間違えてしまったうえに、時間も経ってしまった。回り道もしてしまった」

 翔も座り直し、真っ直ぐに果歩を見つめる。

 静かに続けて言った。

 真剣なその言葉を、果歩はとくとくと胸を騒がせながらも、穏やかな気持ちで聞いた。

「でも今度こそ、自分の気持ちに素直になりたい。ちゃんと気持ちを伝えたいんだ」

 翔はそんなふうに言ってくれる。

 翔さんこそ、本当に誠実なひとだよ。

 今、口を挟めないけれど、果歩は心からそう思った。

「最初に言ったよな、恋人に寂しい思いや不満を覚えさせてしまったことがあったって……、それは変わらないんだ。果歩にもそんな思いをさせてしまうかもしれない」

 でもそのあと、翔は少し悲しそうな様子になった。

 確かに職業も状況も変わっていないのだ。

 翔がその点を不安に思っても仕方がない。

「だから無理にとは言わない。でも、果歩に応えてくれる気持ちがあるなら……、俺と付き合ってくれ」

 真っ直ぐ、真剣に言われた告白。

 翔の言った通り、順番も、時間も、回り道も、ここへ至るまでにあったものは多すぎたかもしれない。

 でも果歩は思う。

 ちゃんとたどり着くべきところへ来られたのだ。

 それならそれらを気にするよりも、大切なことがある。