あれほど甘い夜は初めてだった。

 果歩(かほ)はやわらかくて心地良い肌触りのシーツの中で、うとうとしながら思った。

 優しい囁き、そっと撫でてくれる手、触れ合った熱いくちびる……。

 どれもが果歩を心から幸せにした。

 彼とは初めての一夜だったけれど、そしてまだそれほど交流があるわけでもなければ、付き合っているわけでもなかったけれど、きっとこれから構築していける。

 ちゃんとお付き合いをして、彼氏彼女になって、そしてできれば長い時間を二人で過ごせるようになりたい。

 そんなことを考えているうちに意識はゆっくり浮上して、やがて果歩は、そっと目を開けた。

 海からの明るい日差しが、カーテン越しに差しているのがわかる。

 ああ、もう朝。

 でもほとんど眠れなかっただろうな。

 ほとんど寝落ちるように眠ったのは、もう明け方近くだっただろうから……。

 そう思って、くすぐったくなった果歩。

 でも何故かおかしなことがあった。

 それは、どうやら果歩がこの広いベッドに独りでいるらしきことだった。

 もそっと動いてみても、声をかけてくれるひともいなければ、そもそも他人の気配もない。

 ……おかしいな。

 果歩はそこでやっと疑問に思った。