ただのクラスメイトだった。
目も合わない彼だった。
それが、変わる。
わたしの中の、彼の存在が変わる瞬間を感じていた。
ややや、やばい。
雨宮やばい!
めちゃくちゃ油断してた!
「安堂さん傘持ってる?」
「えっあ、それが……忘れちゃって」
そうだった。でもバス停まで走ったら5分だし……。
「なら一緒に帰ろう。俺の傘に入りなよ」
「ええっ!? い、いいよ!大丈夫です!そこまでご迷惑をおかけできませんっ」
さっさと保健室を後にする彼の背中に全力でお断りをする。
「っはは。なんで敬語? 俺が勝手にそうしたいんだから、遠慮しないで」
「…………」
まじまじとその顔を見つめてしまう。
一見クールで冷たそうな印象の彼。
笑うと幼く見える。
だから?だからなの!?
笑顔の破壊力半端ないんですけど!
ぎゅんって心臓を鷲掴みにされたかと思った。
「安堂さん?」
「うん……ありがとう……」
保健室の入り口でわたしを待つ雨宮くん。
彼の周りだけ、キラキラの粒子が見える。
しとしと聞こえる雨音が、まるでわたしの心音みたいで。
雨宮くんと並んで歩く廊下。
気づかれないようにその横顔を盗み見る。
柔らかな髪が、彼の歩くリズムに合わせて揺れる。
わたしの視線に気づいた雨宮くんが、ん?って感じで片眉を持ち上げる。
雨宮くん。
わたしのこと、どう思ってる?
なんだか無性に聞きたくて、でもまだしまっておきたい気もして、くすぐったい。
「なんか笑ってる?」
「ふふ、ううん。なんでもない!」
これからはじまる恋の予感で
胸がしとしと震えた。
fin.



