最寄り駅から三つ向こうの繁華街にあるシネコンで、マー君が好きそうなスーパーヒーロー系の映画を観てから遅めのランチ。

わたしの好きな映画にしろと言われても、隣で寝られるのがオチだ。頭を使わないストーリーの方が楽だったのも事実。終わったら意外と爽快感があった。マー君も飽きずに最後まで楽しんでいた様子で。

「瑠衣はけっこう泣けるヤツが好きだからなー。サングラスだけは死んでも忘れねーよ」

映画には定番のポップコーンをそれなりにつまんだ結果。お腹の空きがパスタくらいのわたしに合わせたマー君は、向かいの席でドヤ顔をしている。

「・・・由弦お父さんもお母さんに付き合ったのかな」

口から零れた。大して意味はなかった。昨晩お父さんの話をしていたせいか、自然とだった。

フォークにフィットチーネを巻き付けていたマー君の手が止まったのを、「なんでもない」と誤魔化す。そう言えば。マー君にお父さんの自慢話は何度も聞いたけれど、大人になって自分から話題を振ったりはなかったかもしれない。

マー君がふっと笑い、巻き付けたパスタを大きく開けた口に放り込む。