別れよう、とは言われなかった。駅のロータリーで車を降りるときも、まるでタロウの方が懺悔してるみたいだった。

「先に言っとくけど誰のせいでもないから。絶対に謝んないでね」

「いや、・・・けどな」

「話せばどっちかなのは分かってたし、誰も悪くないんだから」

「せめてオレや瑠衣とも話させりゃ良かったんじゃねーのか。そうすりゃ」

マー君が口惜しそうに口をへの字に曲げる。

「娘が腹括ってんのに、ヤマトが泣きベソかいてどーすんの。由弦だったら『上等だ』って、頭撫でてやったと思うけどねぇ?」

刻んだ材料をまな板からボウルに移し替えながら、お母さんはサバサバと。こっちは見ずに水洗いをする手が一瞬、目尻の辺りを拭った。

「考えてもしょうがないなら、今のちはるに出来るのはお腹いっぱい食べること!ほら、ヤマトも手を動かす!」