「あ、お帰りー!ご飯できるまで、光太朗クンとお茶でも飲んでて~」

マー君と二人で仲良くキッチンに立つお母さんが、何かをみじん切りにしながらいつもの明るさで。

料理はお父さんの方が上手だったって、よく自慢される。そう言えばヒロおじさんも得意で、奥さんのスズナちゃんは『ちーちゃん、捕まえるなら料理男子よ?』が口癖だった。

わたしはどうやらお母さん似かな。味音痴でもないし、包丁も普通に使えるけど、凝ってみようとは思わないクチ。マー君はけっこう盛り付けとかに拘るタイプで。タロウはカップ麺かレンチンが関の山。

「・・・ごめんお母さん。タロウは帰ったから」

「帰った?」

即座の反応はお母さんじゃない。中華鍋をガスコンロに下ろした重そうな音が響く。厳しい顔付きがこっちを振り返った。

「全部話したからか?」

「マー君、顔こわいよ」

思わず苦笑い。

「一人で考えたいって。それで駅まで送ってきただけ」