「秘密だよ」

そう言って先生は屋上の扉の鍵を開けた。
丘の上にある私たちの学校。その屋上は、街を一望できる特等席だった。

基本立ち入り禁止のこの空間に人はいない。大きな目玉焼きのような太陽が街に溶けていく。私と先生だけの秘密の景色だ。
「先生」
「ん?」
「私が先生のこと好きって、わかっててこういうことしてるんでしょ」
意地悪だ。そうやって私のこと弄んで。
だから好きが止められない。
「私…苦しいです…」
先生の胸に、昨日頑張って作ったチョコレートを押し付ける。人気だから、色んな人から貰ったことだろう。
「お前だけが苦しんでると思ったか?」
「え?」
ダンッという音と共に、扉と先生の間に挟まれる。
先生の息が、私に降りかかる距離だった。
「このままキスしてやろうか」
先生は、まるで察しろといわんばかりに紅潮した顔だった。

してよ。

そう言おうとした瞬間、柔らかい感触が言葉を塞いだ。


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