空から舞い降りてきたのは、もうすぐ私の背に生えてくるような、ふわりと冷たい天使の羽のようだった。
無数のそれが地に降り注ぎ、世界が一色に染まる。

「…冷た」
指先がほんのり赤くなった手で、地面に落ちた羽をかき集めた。

「なにしてんの」
背後からかけられた言葉に、思わず振り返る。
分厚いコートのポケットに手を入れて立つ表情は、相変わらず無愛想だけど、こんなにも寒い中また彼は来てくれた。

「えへへー。雪だるま作ってた」
私がそう言うと、呆れたように小さくため息をつかれた。

白く立ち上る煙に見惚れていると、グイッと手を引かれ、ほんのり温まったポケットの中に二つの手が入る。
「手袋もつけずに、何してんだよ。真っ赤じゃねぇか」

…だって。
もう二度と触れられないかもしれない。

やがて日が昇り、雪は溶け、時は過ぎる。

私も…あの美しい雪のように、気付かぬうちに消えて、忘れられるのかな…。



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