切なさが加速する前に

カシャ
 氷とグラスの触れる音。

「『それでよかったのか?僕はずるいよな』と彼がここで話したことがあったよ」
「勇気と無謀は違う・・・とママがさっき言っていたけど私もそう思うよ」
 i(アイ)がグラスを合わせる。

「大人だね、i(アイ)は」
「難しいことは私、馬鹿だから分からないよ」
「i(アイ)も彼も小さい夢に想いを託したのだよ。私はここにいたバーテンダーの冬木が私を守るために犯した罪を許さない。でもね、私のために人生を棄てた冬木を待っているんだよ。冬木の想いはしっかりと受け止めているんだよ…」