「私、馬鹿だからさ、うまく言えないんだけど、何故、ここに来たのか分からないんだあ」

 と女は言ってショット・グラスを唇に寄せた。女は頭を動かさないで手首を返すだけでグラスの中身を口の中に放り込むように空けた。
「ここは、FOOLという名のBAR・・・愚か者が静かに酔い潰れるための店さ」
「なるほど、そうかあ」
 女は初めてあたしと視線を合わせて笑顔を見せた。儚さの中の一瞬の希望、そんな笑顔に見えた。