4月2日は6時30分。
目覚まし時計が、夏のセミの声のように音を鳴らして僕の鼓膜を揺さぶる。
寝ボケながらも起き上がり窓を開ける。
「ふぁ〜。4月だっていうのにまだ寒いな」
電車の走る音が近くに聞こえる。窓に腕をかけるように、景色を見る。
5分程経った時、2回目のアラームが鳴りベッドにある時計のスイッチを押す。
昨日は入学式が行われ、今日からは1年生として来る最初の日だ。
まぁだからと言って、何があるわけではないが。
制服に着替え、カバンを持ち階段を下りる。
「あら、おはよう。珍しいじゃないこんなに早く起きるなんて」
「目覚ましに起こされたんだよ」
「ホントに?」
「何を疑うことがあるんだよ」
「お母さんは、てっきり好きな女の子でも出来たのかと思ったけど」
「そんな人僕には出来ないよ」
そう言うとコーヒーを口に含む。手に温もりを感じながら、完全には起きていない体を起こす。
「今日も遅くなるの?」
「恐らくね」
「ふ〜ん……やっぱりそうだと思うんだけどな……」
「何のこと?」
「何でもないよ」
朝食を食べ終わり、歯を磨く。
コーヒーの苦味がミントの香りに吹き飛ばされていく。
身支度が終わると7:30を過ぎていた。
「母さん、行って来るよ」
「気をつけて行きなさいよ〜」
皿を洗う手を止め、腕についた泡を飛ばしながら手を振っている。