俺と冬香と名乗る女の子は公園をあとにして、電車に向かった。
「ねぇねぇ春樹くん?」
「……」
「ねぇ〜聞いてる〜?」
「あまり僕に話しかけないでくれる」
「なんで?」
「まるで僕が君と友達みたいに見えるじゃないか」
「いいじゃない。だって私達友達だもん」
「はぁ……」
「あ〜!またウザイって思ったでしょう。分かるんだからね、君は顔に出やすいんだから」
「あ、あのさ……」
顔を彼女の方に向けると、驚いたような表情をしている。
「なんで驚いてるの?」
そう聞くと彼女は、嬉しそうに言った。
「だって初めて君から話しかけようとしてくれたから驚いたの」
「友人の少ない僕でも話しかけることぐらいあるよ」
「ふふっ友達が少ないことは認めるんだね」
今までで、一番と言っていいほどニヤニヤとしている彼女に僕は言った。
「僕は君と違って謙虚だからね」
「あ〜!君今私が素直じゃないって言ったでしょ?」
顔を膨らまして彼女が言う。が、どこか嬉しそうな表情もしている。
「そこまでは言ってないよ。ただ……」
「ただ?」
「僕は君がどういう人間なのか知らない。」
「それがどうしたの?」
「だからさっきの言葉は取り消すよ」
「え?」
「君が素直じゃないってこと」
「しょうがないな〜。じゃあ特別大サービスで許してあげる」
「ありがとう。」
12時30分、電車がきた。
俺はいつもどうり切符を買い、改札を通った。
電車に乗ると席が空いていたので座ることにした。そこでふと思った、彼女はどこに行ったのだろうか。窓を向いていた顔を横にふると座っていた。
「うわぁーー!!」
「何をそんなに驚くことがあるの?」
「まさか横に座っているとは思わないじゃないか。」
「友達でしょう?横に座わるなんて普通でしょ?」
「友達って言うけど、僕は君と友達になった覚えは無いんだけど」
「いいの!私が友達だと言えばそうなの!」
「どんな理屈だよ!」
視線を感じ声を抑えた。
「とにかく僕はまだ君を友達とは思っていないからね」
それだけ言うと、僕は窓の方に目を向けた。
彼女もそれ以上は、言ってこなかった。