カレンダーの日付は4月1日。今日は学校の入学式だ。
昨日の雨が嘘のように、晴れ晴れとした日になった。マンホールの上の水たまりを避ける僕は中学3年の山根 春樹だ。
「何で入学式に3年が行かないといけないんだよ……」
ボソボソと文句を言いながら学校へ向かう。
学校に着くと、担任が校門に立っていた。
「お〜山根。ワリィな忙しい日に」
「いえいえ、僕なら大丈夫です。」
「今日は前にも言った通り、保護者の案内だけだから10時には帰れると思うからそれまでよろしくな」
「分かりました」
担任が言った通り、10時には終わり帰ることができた。
普通ならこのまま家に帰るが、僕は一人の時間が好きだ。だから僕の基地とも言える場所に向かうことにした。
朝よりは乾いたアスファルトをテンポ良く歩く、僕の基地まではあと30秒。
少し歩くと基地に着いた。そこには大きな桜の木が一つあり人気はまずない。
いつもどうり木に近づこうとしたがあることに気づいた。木の後ろに人が座っているのだ。
「いつも誰もいないはずなんだけどな……」
僕は恐怖心と好奇心が合わさった、例えるならばバニラと抹茶のソフトクリームのようなそんな気持ちだ。
恐る恐る近づく。勇気を出して声をかけようとしたその時だった、座っていた筈の女の子が意気よいよく立ったのだ。
僕は驚き尻もちをついた。
「あははっ」
この子はなぜ笑っているんだ?この子は誰なんだ?
僕の頭の中は?が溢れた。
「春樹くん、私は君を待っていたの」
この子は何を言い出すんだ。いきなり会った人に待っていたなんて。新しい犯罪の一種なのかもしれないと、よく分からないこと考えている。
ためらいながら話しかける。
「君は誰なの?何で僕を待っていたの?」
言い終わってからやってしまったと思った。
「すごく聞いてくるね。それもそうか」
ニヤニヤと笑っている顔に少し、イラッとした。
「わたしは冬香。あなたがよくここに来ることを知ってたからここで待っていたの。」
うふっと笑った。またしてもイラッとしたが顔には出さなかった。
「ああ〜!今ウザって思ったでしょう?」
これは驚いた。顔には出してない筈なのに、僕の気持ちがわかるなんて。もしかしてこの子は、僕の気持ちを見透かしているのか?そう思い聞いてみた。
「どうして分かったの?」
「だって君、今そんな顔してたからだよ。友達に分かりやすいって言われない?」
「あいにく僕には、友達と言える人はいないんだ」
「あら、それは可哀想な。じゃあ私が君の友達になってあげる。」
「そんな勝手な」
「もう決めたんだもん。それと、私のことは冬香ちゃんって呼んでね。」
「そんなの呼べるわけないだろ!」
「え〜。じゃあ冬香でいいよ」
「ぅん……」
「返事は!」
「分かりましたよ。えっと……冬香さん」
僕と冬香の物語が幕を開けた。