間接的に唇と唇を合わせてしまったことに気付く。

あの時の黒川君は驚いた様子でいた。

その理由が今になりわかり、途端に恥ずかしさを感じる。

頬が熱くなり、まるでのぼせたようになんだか頭がくらくらした。

「大丈夫?気持ち悪い?」

そんなことない、と言いたいのに、首を左右に振ることしかできない。

すると、彼は私が酔ってしまったと判断したようで、席を立ちすぐ隣の席に座り、背を撫でた。
近距離になったことで、増々体が火照る。
耳まで熱く赤くなっている自覚がある。

「厳しそうだね、待ってて、水もらってくる」

彼の後姿が離れていくとホッとした。

黒川君のことは怖くない。

自然にしてしまった間接キスだが、気付いた今でも嫌だとは思わない。

ただ、意識してしまった。

私はしばらく唇を抑えたまま動けなかった。