3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「それなら大丈夫。以前、あそこの店の店主のオペを担当したことがあって、それ以来の付き合いなんだ。連絡を入れたら店を開けといてくれるってさ」

 なるほど。店主は理人さんの患者だったんだ。

「でも疲れているんじゃないですか? 打ち合わせにも付き合っていただいていますし、衣装合わせは私ひとりでも大丈夫ですよ?」

 今日だってオペが入っていたはず。結婚式の打ち合わせに新婦だけ来ているカップルも多い。だから無理することないのに、彼は忙しい合間を縫ってできるだけ一緒に来てくれている。それだけで十分なのに。

「体力が基本の医者だぞ? 疲れていないさ。それに無理はしていない、打ち合わせもだが、俺が行きたいから行くんだ」

 甘い声で囁かれた言葉に胸がギュッと締めつけられる。

「それならいいんですけど……」

 まっすぐ前を見つめたまま、必死に胸の高鳴りを鎮めていく。

 どうして契約結婚の相手の私にここまでしてくれるのだろう。忙しいのだから面倒なことは私に任せておけばいいのに。
 優しい言葉をかけられると、まるで本当に理人さんと愛し合って結婚するような錯覚に陥ってしまうから気をつけないと。