3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「この後の予定は?」

「とくにないですけど……」

 私の返事を聞いて理人さんは「じゃあ行こう」と言って、私の腰に腕を回した。すると奈津希だけではなく、残っていた同僚たちも黄色い悲鳴を上げる。
 こうなっては離してくださいとは言えそうにない。職場でも円満夫婦を演じることと約束をしたのだから。

「はい」

 少しぎこちなくなってしまうのは仕方がないこと。理人さんみたいな人と少しでも身体が触れたら誰だってドキドキしちゃって冷静ではいられないもの。

 奈津希たちに見送られ、廊下を進む時も彼の腕は私の腰に回ったまま。それを見て廊下ですれ違う人たちからの視線をヒシヒシと感じる。

「見て、あれ」

「噂は本当だったんだ。羨ましい」

「ふたりが一緒にいるところを初めて見たけど、お似合いじゃない?」

 聞こえてくる声に居たたまれなくなる私とは違い、理人さんは満足げ。

「いい感じに俺たちのことが浸透しているな」

「そのようですね」

 私たちしか聞こえないボリュームで話した後、彼に聞いた。

「どうして急に事務室に来たんですか?」

「急患もなく、患者の容態も落ち着いているから早く上がれたんだ。だから衣装合わせに行こうと思って」

「行こうって言われても、衣装合わせの日は今日じゃないですよ?」

 予約が必要だし、この時間なら閉店しているはず。