3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

 どうしたの? と聞く間もなく奈津希は私の腕を引いた。

「終わらないなら私が代わりにやっておくから、野々花は早く上がって」

 つい一分前にはドラマの放送を楽しみに帰ろうとしたのに、代わりにやっておくってどういうこと?

「ちょっと奈津希ってば、いったいどうしたの?」

 ワケもわからぬまま貴重品が入ったバッグを私に渡すと、奈津希はニヤニヤしながらドアを指差した。

「ほら、早く帰らないと」

 彼女の指さす方向に目を向けたら、開いたドアの先で白衣を脱いだ理人さんが小さく手を振っていた。

「理人さん?」

 どうしてここに? 今まで一度も事務室に来たことなんてなかったのに。

 戸惑いを隠せずにいると、理人さんは残っていた他の事務員に「お疲れ様」と言いながらこちらに向かってきた。

「仕事は終わった?」

「えっと……」

 あと少しで終わりますと私が言うより先に奈津希が口を開いた。

「はい、野々花はちょうど今終わったところです!」

「ちょ、ちょっと奈津希?」

「お疲れ、野々花。また明日ね」

 一方的に言って奈津希は私の背中を押した。