あんな姿を目の当りにしたら、ともに過ごした六年間はまるでたった数日間だったような関係に思えた。

 普通だったら別れたくないと泣いて引き止めたり、怒りで一発や二発くらい殴ったりしても当然なのに、そんな気がまったく起きなかった。
 だって彼にとって私はもう必要のない存在になっていたのだから。今さらどうしたって別れる以外の選択肢はない。

 だったら騒ぐだけ無駄。私は黙って彼の要求を受け入れて別れを選んだ。

 こっちは浮気をされた側だ、なにも悪くない。だから泣いたら負けのような気がしてこの三日間、できるだけ前向きに考えてきた。

 浮気されたのがむしろ結婚前でよかった。お金だって戻ってきたし慰謝料としてけっこうな金額をもらえた。

 あんな最低な男のなんて早く忘れようと思って、もらった慰謝料でドレスや靴、バッグを買って三万円もするコース料理を食べにきた。

 ここで彼と結婚式を挙げようと夢見ていた自分に、別れを告げるために。

 だけど六年という月日は長い。そばにいるのが当たり前になりすぎた。……やっぱり寂しいよ。