でも失礼のないように気をつけることに越したことはない。まずはしっかりと挨拶をして、少しでも好印象を持ってもらわないと。

 しかしそんな私の心配をよそに、理人さんの言う通り彼の祖父は玄関で私を見るや否や泣いて喜んでくれた。

「生きているうちに理人の嫁さんを紹介してもらえる日がくるとは……!」

 祖父は目に涙を溜めてギュッと私の両手を握った。

「野々花さん、どうか理人をよろしくお願いします!」

「は、はい」

 返事をしながらも困惑する中、見兼ねた理人さんが助け船を出してくれた。

「じいちゃん、ここ玄関だから。いきなり泣きながら言われた野々花が困っているのがわからないのか?」

「すまん、理人。いやー、理人から連絡をもらった時からこの瞬間が待ち遠しくてな。ささ、どうぞ上がってください野々花さん」

「ありがとうございます」

 上機嫌で先を行く祖父は、とても余命宣告されたようには見えないほど元気そう。

「な? 反対されることはないって言っただろ?」

「はい、そのようですね」

 コソッと耳打ちしてきた理人さんは、前を歩く祖父を見て続ける。