「俺も両親もなにかあったら心配だから一緒に暮らそうと言っても、お手伝いさんやヘルパーさんの助けを借りれば、ひとりでも暮らしていけるって言ってきかないんだ」

「そうなんですね」

 理人さんの父は医院長だから、何度か見かけたことがある。彼と似ていて常に厳しい表情をしており、近寄りがたい印象を持つ。しかしその前の医院長であった祖父は見たことがない。

 いや、でもあの医院長の父だ。理人さんの話を聞いていると頑固そうな感じがするしすごく怖い人なのかも。理人さんが祖母の大好きな芋羊羹を持ってきてくれたように、私も彼に聞いて祖父の好きなきんつばを買ってきた。

 反対されることはないから、契約通りに仲睦まじいフリをしてくれたらいいって言っていたけれど、果たして本当にそうなのだろうか。

 今さらながら緊張してきてきた私に気づいたのか、理人さんはクスリと笑った。

「療養中でも俺が結婚相手を連れて行くって言ったら、電話越しでもわかるくらい喜んでいたから大丈夫だ。……野々花のおばあちゃんと同じように、感激してくれると思う」

「それならいいんですけど……」