理人さんを連れて来るや否や、祖母や感激していた。前もって結婚を考えている人だと伝えていたから余計かもしれない。あまりの歓迎ぶりに最初は理人さんも戸惑っていたほどだ。

「結婚式は挙げるの?」

「はい、もちろんです」

 すぐに理人さんが答えると、祖母は顔を綻ばせた。

「長生きはするものね。ののちゃんの花嫁姿が見られるなんて。楽しみにしているわ」

「……うん」

 この笑顔を見たかったから理人さんと契約結婚をすると決めたんだ。だから祖母が喜んでくれて嬉しいはずなのに、なぜかずっと胸の痛みが取れることはなかった。


 それから私たちは祖母お手製の料理を昼食にご馳走になり、本音を言えばもっとゆっくり長居したいところだったけれど、早々と家を後にした。

「せっかく顔を見せてやれたのにごめんな」

「いいえ、そんな。また今度ゆっくり来ればいいんですから気になさらないでください」

 半年以上先まで、オペの予約が入っている理人さんが一日休みを取れるのは非常に稀。だから私も今日に合わせて有休をとって、両家の挨拶に行くことになったのだ。

「うちの挨拶が一カ所で済むなら夕方までゆっくりできたんだけどな。どんなに一緒に暮らそうと言っても、じいちゃんが頑なにばあちゃんとの思い出の詰まった家から出ようとしないんだ」

 運転をする彼を見たら、困ったように眉尻を下げて続ける。