翌週の水曜日のお昼前。向かった先は祖母がひとりで暮らす築五十年以上になる平屋建ての一軒家。
 ここは亡き両親も結婚当初から暮らしていた家でもある。

 広い庭先には祖母が昔から畑で野菜を育てていて、今も収穫間近のナスやピーマンがある。
 その畑を眺めることができる茶の間に不釣り合いな高級スーツを着た理人さんが、祖母に向かってよくテレビで見るやつをやっていた。

「どうかお孫さん……野々花さんを僕にください」

 丁寧に頭を下げた理人さんに、祖母は困惑していた。

「そんなっ……! 顔を上げてください、高清水さん」

 顔を上げた理人さんに、祖母は目を赤くさせた。

「私はののちゃんが選んだ相手なら、誰であっても反対するつもりはありません。……息子たちの忘れ形見のののちゃんを、どうか私の代わりにこれからは高清水さんが守ってやってください」

「おばあちゃん……」

 祖母が目を細めた瞬間、涙が零れ落ちた。

「あら、だめね。歳をとると涙脆くなって困るわ。でもののちゃんに素敵な人を紹介してもらえて嬉しくって。本当によかったわね」

 祖母に満面の笑みで言われ、チクリと胸が痛む。