野々花と結婚してから、これまでの仕事スタイルに変化があった。自分以外の医師を信頼することができず、なんでも自分で抱え込んでしまっていた。

 だけど同僚に任せるようになってからというもの、明らかにみんなとの関係も大きく変わった。もちろんいいほうにだ。

 コミュニケーションも盛んにとれるようになり、いい連携ができている。こうして心配してくれる後輩もいる。
 なぜもっと早くにこうしていなかったのかと後悔することもあるほど。

「ありがとう。周りにどう言われようと仲間がわかってくれているなら、それだけで十分だ。でもこのままではいけないともちゃんとわかってる。……明日のオペが終わったらケリをつけるよ」

 祖父が週末に父を呼び出し、天音のことを説得してくれたと言っていた。俺から両親にしっかりと自分の意思を伝えるつもりだ。

「それは渡部先生に制裁を科すということですね!? だったらこれまで渡部先生に嫌な思いをさせられた医師や看護師も喜びますよ。あ、俺的にはどこか違う病院に行ってくれたら嬉しいんですけど」

 みんな口に出さないだけで、天音がだいぶ迷惑をかけているようだ。それも当然だろう。彼女の言動は優秀な医師といえど、目に余るものがあるから。