3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「お義母さんが直接理人さん本人の気持ちを聞いたうえで、本気で理人さんの幸せを考えて私と離婚しろと言うのなら、その時は潔く理人さんのことを諦めます。でもそうでないのなら、絶対に私は理人さんから離れません」

 どんなに頑張っても私の気持ちが理人さんに届かないのなら、つらいけれど諦めるしかない。だけど諦めるためにも理由が必要だ。後悔のないようにさせてほしい。

「お願いします、どうか一度理人さんと話を聞いてあげてください。そして彼の幸せを第一に考えてあげてください」

 そうすればきっと彼の望まない未来は訪れないはず。その思いで言ったけれど、お義母さんはどう思っただろうか。

 なにも口を挟まなかったのは、怒りで震えていたから? それとも、少しは私の気持ちがお義母さんの心を動かすことができた?
 緊張が増していく中、お義母さんの答えを待つ。

「失礼するわ」

「えっ? あっ」

 お義母さんはなにも言うことなく、帰っていってしまった。玄関のドアが閉まる音が聞こえてくると同時に一気に緊張が解けて、その場に座り込んでしまった。

「言っちゃった」

 それもずいぶんと生意気なことを。だけど、後悔はしていない。言いたいことを言えて心がすっきりしている。あとは明日、理人さんに想いを告げるだけだ。

 飲まれなかった珈琲を片づけて、すぐに調理に取りかかる。