「戻ったら一緒に食べようね」
「悪いけど食べながらカルテを確認したいから無理だ」
「えぇー、そんなこと言わないでさぁ」
少し離れた距離を歩く私にまで、渡部さんの甘い猫なで声が聞こえてくる。そんな渡部さんに対して理人さんも強い口調で答えていた。
「見て、あのふたり。もしかして一緒に病院に泊まったのかな?」
「仕事ででしょ? それにどう見ても高清水先生は相手にしていない感じじゃない?」
「えぇー、でも医院長はあの受付の子と別れさせて、渡部先生と結婚させようって思っているんでしょ?」
本当にだいぶ噂が広まってしまっている。前を歩く理人さんと渡部さんの話をしているふたりは、私の存在に気づいていない。気まずくて進むスピードも次第に遅くなる。
だけど不意に振り返ったひとりに気づかれてしまい、もうひとりに向かって人差し指を立てた。
「しっ! いるから」
「えっ?」
振り返ったもうひとりも私に気づき、ギョッとなる。
「ごめんなさい」
謝りながらふたりは逃げるように走っていった。
噂はきっとそのうち消えるとわかってはいるけれど、この先どうなるかわからないから聞くたびに嫌な気持ちになってしまう。
「悪いけど食べながらカルテを確認したいから無理だ」
「えぇー、そんなこと言わないでさぁ」
少し離れた距離を歩く私にまで、渡部さんの甘い猫なで声が聞こえてくる。そんな渡部さんに対して理人さんも強い口調で答えていた。
「見て、あのふたり。もしかして一緒に病院に泊まったのかな?」
「仕事ででしょ? それにどう見ても高清水先生は相手にしていない感じじゃない?」
「えぇー、でも医院長はあの受付の子と別れさせて、渡部先生と結婚させようって思っているんでしょ?」
本当にだいぶ噂が広まってしまっている。前を歩く理人さんと渡部さんの話をしているふたりは、私の存在に気づいていない。気まずくて進むスピードも次第に遅くなる。
だけど不意に振り返ったひとりに気づかれてしまい、もうひとりに向かって人差し指を立てた。
「しっ! いるから」
「えっ?」
振り返ったもうひとりも私に気づき、ギョッとなる。
「ごめんなさい」
謝りながらふたりは逃げるように走っていった。
噂はきっとそのうち消えるとわかってはいるけれど、この先どうなるかわからないから聞くたびに嫌な気持ちになってしまう。



