3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「縁、か。……たしかにここでキミと出会ったことは、なにかの縁があるのだろう」

 そう言うと高清水先生は前のめりになる。

「ではまずは、俺の奥さんにキミの名前を聞いてもいい?」

「あっ、すみません。自己紹介もまだでしたね。泉野々花といいます。歳は二十六歳です」

「俺は……言わなくてもわかるよな」

「はい、病院で働いていて高清水先生を知らない人はいませんので」

 すると高清水先生は席を立ち、私の隣にやって来ると手を差し出した。

「今後について話をしたいから、場所を移そう」

 たしかにここでは、三年後に離婚が決まっている契約結婚の話などできそうにない。

「おすすめのバーがあるんだ。そこでうまい酒でも飲みながら話を詰めようと思ったが、飲める?」

「はい、飲めますよ」

 照れ臭さを感じつつも、ずっと差し出された手を取らないのも失礼だと思いそっと手を重ねた。

「それならよかった」

 ギュッと手を握られてドキッとしてしまう。

「じゃあ行こうか、野々花」

「えっ?」

 今、ナチュラルに『野々花』って言ったよね?