3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「なにしてるんだ、天音」

 ここが病棟の廊下だと言い聞かせて、できるだけ小声で言うものの、天音は悪そびれた様子がない。

「本当に理人ってば、どうして昔から無駄にモテちゃうの? 気をつけないと変な女に付き纏われるからね」

 それは天音だろ? と言いたい気持ちをぐっと抑さえる。ここで感情的になってはだめだ。

「余計なお世話だ。天音に俺のプライベートを干渉する資格はない。それに俺は結婚している」

「知ってる。おじさまとおばさまから聞いたわ」

 やはり知っていたか。ますます今日中に野々花に話さなくてはいけなくなった。

「わかっているならいい。それとさっきのことだが、患者の治療方針は医局で話し合った上で決まったことだ。ここはアメリカじゃないことを今一度自覚しろ」

 すると天音は深いため息を漏らした。

「本当に日本の医療って堅苦しくて嫌い」

「だったら戻ってこなければよかっただろ?」

 自由気ままな性格の天音にとって、アメリカの風習は肌に合っていたのかもしれない。

「そうしたら理人のお嫁さんになって、この病院をさらに大きくすることができないじゃない」

「は?」

 天音はなにを言っているんだ? 俺は今さっき結婚していることを伝えたよな。