3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「天音は今すぐに他の病院へ行かせろ。もし野々花に天音が危害を加えようものなら、俺も黙っていないから」

 踵を返してドアに向かう俺に父は「待ちなさい、理人!」と引き止める。しかし俺は足を止めることなく医院長室を後にした。

 最悪な事態になった。とにかく今から午前の診察が始まり、それが終わったら回診もある。昼休憩の時に祖父に電話で相談しよう。
 きっと力になってくれるだろうし、さすがの父も祖父には逆らえないはず。そして今日はできるだけ早く帰宅して、野々花に天音のことを話さなければいけない。

 これからの予定を頭の中で整理し、平常心を保って診察にあたった。


「ねぇ、理人。あの人はこっちの治療法でって言っているけど、この患者さんの場合は違う治療法がいいと思うんだけど」

 回診中に他の医師が患者に経過と今後の治療方針を説明している隣で、天音はとんでもないことを言いだした。

「え? 先生、どういうことですか? 私は大丈夫なんですよね?」

 患者の不安を煽った天音を病室から出し、謝罪して決定した治療方法で問題ないことを伝えた。

 回診を終えて廊下に出ると、今度は看護師に対して「さっき、理人を変な目で見ていたでしょ?」と難癖をつけていた。