3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

 これまでの天音の言動を思い出すと、不安で仕方がない。俺が守るといっても、二十四時間一緒にいるわけにはいかなんだ。きっと天音なら隙をついて野々花に接触するはず。

「すべて理人が悪いんだぞ?」

 ため息交じりに言われた言葉に、「どういうことだ?」と聞けば、その理由を父が話しだした。

「母さんとずっと天音ちゃんが治療を終えたら、理人と結婚してうちの病院を継いでもらうつもりでいたんだ。それなのに、あんななんの役にも立たない娘と結婚などして。お前は高清水病院の跡取りという自覚はあるのか!?」

 声を荒らげる父に対し、俺も反論に出た。

「それに関して俺は天音と結婚するつもりはないと、何度も言ったよな? 結婚願望が亡くなったのは天音のせいだとも! そんな俺に天音と結婚しろなどよく言える。それでも俺の親なのか?」

「言葉が過ぎるぞ、理人!」

 勘に触れたようで医院長室中に響くほど大きな声で怒鳴る父に、怒りがさらに増す。

「天音ちゃんほどお前を想い、病院のためになる相手はいないということがわからないのか? 恋愛と結婚を結び付けられる立場に立っていないことを言い加減自覚しろ」

「悪いけど、父さんたちの敷いたレールの上を歩く人生などごめんだ。それに俺は野々花とじいちゃんたちのような夫婦になりたいと思っている。これから先も俺の妻は野々花ひとりだけだ」

 はっきりと言った俺に対し、顔を歪ませる父の机をバンッと叩いた。