3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「さっき、周囲に同僚がいるにもかかわらず、抱きついてきたんですよ? まだ彼女は治療が必要です。それなのになぜ帰国などさせたんだよ!」

 病院内では親子ではなく、医院長と部下という立場。だからずっと敬語で話していたが、最後は敬語を使うことも忘れてしまうほど頭に血が上ってしまった。
 すると父は書類を見る手を止めて、俺を見上げた。

「向こうじゃそれが日常的な挨拶だったんだろう。頬にキスする挨拶もあると聞くぞ?」

「ここはアメリカではありません」

 すぐに反発するも、父は代わらず冷静に続ける。

「天音ちゃんはすでに心療内科での治療を終えたと報告を受けている。だから医師が不足している外科に招き入れたんだ。お前も心強いだろ? 彼女は優秀だそうだ。向こうでは散々引き止められたらしいぞ」

「話を逸らすなよ。たとえ天音がどんなに優秀な医師だろうと関係ない。さっきの様子じゃまだ俺に執着している。……今の俺には野々花がいるんだ。彼女に危害が及んでもいいと思っているのか?」