3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

 天音は俺と同じ大学の医学部を受験し、常に俺のそばにいた。時には手料理を振る舞いたかったのか、弁当を作ってくることもあった。

 食べなければ食べないで面倒だと思い、渋々食べたものの、この弁当がトラウマで俺は信用できる人の手料理以外は食べられなくなってしまったのだ。

 食べ進めていると、何本も短い髪の毛が入っていることに気づき、すぐに吐き出した。それを見て天音は「せっかく私を好きになるおまじないをこめたんだから、食べてくれなきゃだめ」と言った。

 よく聞いたら自分の髪の毛を数本短く切って料理に混ぜたらしい。それを食べると相手も自分を好きになるという迷信を信じてされた行為に、しばらく吐き気が止まらなくなってしまった。

 俺は当時医院長だった祖父に相談し、両親とは違って深刻な事態だと捉えてくれた。祖父の計らいで天音はうちの病院で採用されることはなく、都内の病院勤務となった。

 これでやっと天音から離れられると安堵したのも束の間、会えないからか天音は今まで以上に連絡をしてくるようになった。

 研修医時代にも関わらず、天音は執拗に俺に会いたがり、連絡を返さなければ返すまで何度も電話とメッセージを送ってくる。