３年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「久しぶり！　元気だった？」

　そう言って周囲の目もくれずに俺に抱きついてきたのは、四年前にアメリカの病院に臨床研修留学に行ったはずの天音だった。

「天音？　どうしてここに……？」

　突然現れた彼女に戸惑いを隠せない。そんな俺にはお構いなしに、天音はギューッとしがみついてくる。

「びっくりした？　見てこれ」

　そう言って天音が俺に強調してみせたのは、首にかけた名札。

「まさかうちの病院で働くのか？」

　信じられない話に目を白黒させてしまう。すると天音はにっこり微笑んだ。

「理人には内緒でおじさまと話を進めていたんだ。私、ずっとこの病院で理人と働くことが夢だったから嬉しい。これからよろしくね」

　離れた天音は俺に手を差し出したが、なかなか握ることができない。
　正気なのか？　うちの病院で働くとか。父はいったいなにを考えているんだ？　まさか俺と天音の間にあったことを忘れたのか？

　なんのために祖父が天音に臨床研修留学の話を持ちかけて、日本から発たせたと思っているんだ？

　時間を確認すると、まだ診察まで三十分ある。