3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

 初めて出会った日も、患者からの嬉しい言葉を教えてくれた。俺の仕事に対して理解してくれているし、彼女もまた自分の仕事に真摯に取り組んでいるところにとても好感が持てる。

 さらには俺が疲れて帰ってくると思い、俺の好物を作って待ってくれていた時はどんなに嬉しかったか……。
 昔から母は家事はすべて家政婦任せで、母の手料理など食べた記憶がない。帰宅しても出迎えてくれるのは家政婦だけ。

 それが当たり前になっていた俺にとって、野々花との生活はすべてが新鮮だった。三食心のこもった料理を作ってくれるのも、朝は送り出してくれて、帰ってきたら出迎えてくれるのも、協力し合うこともすべてが初めての経験だった。

 結婚や家族に対して憧れがなかったのに、野々花とならこの先もずっと一緒にいたい。離婚なんてしたくないし、彼女が他の男と結婚することも考えたくない。

「俺は野々花のことが好き、なんだな」

 ベッドに入ったものの、なかなか寝つけず野々花のことばかり考えていた結果、出た答えがしっくりきた。
 好意を寄せているなんてものじゃない、好きなんだ。

 納得すると野々花に対する気持ちに実感が湧いて、胸がいっぱいになる。