「じいちゃんがばあちゃんが亡くなって、仕事ばかりでふたりの時間を十分に取れなかったのを悔やんでいたのを思い出したよ。俺には同じ思いをしてほしくないのかもしれない」

「きっとそうだと思います」

 だからますます理人さんとは本物の夫婦ではないことに、罪悪感を抱いてしまう。

「遊園地を満喫して、喜ぶお土産を買っていきましょう」

「あぁ」

 嘘をついてしまった手前、最後までその嘘を突き通す必要がある。彼の祖父が亡くなるまで理人さんとの関係は本物だって演じ続けよう。

 改めてそう心に誓った。


 遊園地に着いたのは十一時前。日曜日ということもあって多くの人で混雑していた。

「どのアトラクションもけっこうな待ち時間だな」

「そ、そうですね」

 パンフレットを見ると、たくさんの絶叫アトラクションがある。

 そうだ、ここは絶叫アトラクションが豊富なことで有名なところだった。実は昔からこういった乗り物は得意じゃなくて、友達と来ても私は荷物番やカメラ係を買って出ていたんだった。

 理人さんは平気そうだよね? どれから乗るか迷っているようだし。せっかくプレゼントしてくれたチケットを無駄にすることがないよう、これは腹を括って乗るしかない?

 怖いと思ったのは幼少期だったんだ、大人になった今は案外平気な可能性もある。

「まずはこれから乗らないか? 今のところ、一番待ち時間が少ないようだ」