君が好きなだけ。



7月に入ってすぐ、俺の所属するバスケ部の大きい大会があった。その練習もあって塾もあって、正直身体的にしんどかったけど、彩海の笑顔を見たら癒されて、頑張ろうと思えた。




大会を明後日に控えた日。彩海がすごい挙動不審だから、声をかけたら、めちゃくちゃモジモジしながら、ミサンガをくれた。自分で1から編んだって言ってて、相当な不器用なのに……って柄にもなく感動した。




黒と白の糸で作られたミサンガを左足につける時、願いを込めた。





……これからも、彩海と一緒にいられますようにって。










お互い受験勉強で、なかなかちゃんとしたデートもできなかったけど、俺たちなりに毎日を楽しんでたと思う。




そんな俺と彩海の初デートは夏祭り。




たまたま塾の講義の時間と被らず、彩海の希望もあって行けた。




白と水色をベースにした花柄の浴衣は、彩海の存在をより儚げにし、綺麗だった。




俺は俺で彩海に、浴衣を来て欲しいと言われ、なんてことない黒の浴衣を纏っていたんだけど。




「直視できない……!」なんて、夜でもわかるくらい耳を赤くしてる彩海がかわいくて、ちゃんと見ろよとか言って彩海を軽くいじめた。




すっごい嫌がってきたけど、たこ焼き食べよって言えば、すぐに機嫌が直って、足取り軽く歩き出した。




家を出る時、親がにやにやしながら俺に「足の靴擦れとか気をつけてあげなさい」とか言われたから、彩海に「足大丈夫?」と聞けば、





「うん!サンダルにしたもん。本当は下駄履こうと思ったんだけど、絶対足痛くなるからやめたんだ〜。だって、雰囲気は下駄の方が出るけど、そのせいで足辛くてデートが最後まで楽しめませんでした、とか絶対にやだもん!」





なんて、にこにこしながら語ってくれて。




彩海が前勧めてきた恋愛小説のヒロインは、夏祭りに靴擦れをして後の彼氏となる人におんぶしてもらって帰ったってエピソードがあって、確か、それを彩海は羨ましいとか言ってた。




でも、そんな憧れより、俺といる時間を少しでも楽しもうとしてくれてる彩海に、俺は笑顔がこぼれる。




彩海の考えは人とは違うかもしれないことが多い。でも、その理由を聞けば納得できるし、俺はその彩海の考え方が好きだった。




「……花火のよく見えるとこ、兄貴に教えてもらったから、行こ」




兄貴が前にこの夏祭りに来た時見つけたとっておきの花火スポット。彼女とデートなら、ってにやにやしながら教えてくれた。




手を繋げば、毎回照れて。



顔を覗き込めば、数秒は頑張って目を合わせてくるけど、しばらくすると耐えられなくなって、顔を赤くしながら目をそらしてきて。



頭を撫でれば、目尻が垂れて笑って。



俺が抱きしめれば、遠慮がちに、でもしっかり背中に手を回して、胸に顔をうずめてきて。




キスをすれば、肩を強ばらせるけど、潤んだ目で見つめてきて。







そんな彩海に、好きは加速するばかりだった。




光る花火に見とれる彩海が綺麗でかわいくて。




「彩海と来れてよかった」



「うん!私も!」



「……好きだよ」



「私の方が燈馬のこと好きだもーん!」




好きに関しては、あんまり恥ずかしげもない所も。











全部全部、俺以外に向けてほしくない。








この日が、俺らのちゃんとした最初で最後のデート。