とてもさむい日だった。

 気が付いたら、
  僕は木の中にいた。



 土はあたたかい。

 雨はつめたい。

 朝はあつい。

 夜はさむい。

 たくさん覚えたと思う。
 上にすんでいるフクロウは物知りで、たずねると何でも教えてくれた。

 あれは何?
 あれは雲さ。

 あれは何?
 あれは月さ。

 あれは何?
 あれは町さ。

 あれは何?
 あれは……。

 はじめてフクロウが口をふさいだ。

 あれは何?

 もう一度聞いても、答えてくれなかった。
 それでも
 僕はあきらめなかった。

 やがて、フクロウはふぅっと、ためいきを吐いた。


 あれは、人間だよ。



 はきすてるようにフクロウは言う。
 そのまま、どこかに
 飛んでいってしまった。

 彼は一度振り返った。

 ぶきみな音を立てる物を持った人間を。



 フクロウは帰ってこなかった。



 ぼくは

 帰る場所を失った。