出向期間を終えた透は既に桜田フーズに戻っており、桜田透として義父の後を継ぐための経験を積んでいる。

『蒼が成長したらあいつのサポートをしようと思ってる。それまでは会社の発展のために頑張るよ。まあ親父は長く社長をしそうだから、俺の出番はないかもしれないけど』

 透の言葉に桜田社長は『僕はさっさと引退して奥さんと悠々自適に暮らしたいんだけど』と笑っていた。

 桜田家は一般的には“普通”の家族ではないかもしれない。でもそれでいい。お互いを家族として想い、尊重し合っていければもう家族なのだから。

 肉親を亡くした唯花にとって、透の家族に温かく迎えて貰えたことは涙が出るほど嬉しかった。

 
 蒼に池の亀を紹介してもらい、おやつを一緒に食べてから桜田家を辞し、透とふたりで新居の家具を選びに大型家具店にやってきた。

 結婚式は3か月後だが、来月には入籍し、新居に引っ越す予定だ。
 新居は桜田フーズの本社に程近いマンションだ。唯花の勤め先にも電車一本で行ける好立地でもある。
 
 相変わらず唯花はサクラダペットの経理で業務にあたっている。

 奥村専務は降格の上、地方の関係会社へ出向になった。
 娘の愛奈は情報漏洩に加え、システム不正の件の関与も明るみになり、退職していった。