いきなり社長が飛躍した話をしだすので唯花は慌ててしまう。隣で透も目を泳がせている。
その様子に社長は呆れた顔になる。
「もしかして透くん、それっぽいことも言ってないのか? 重いくせにヘタレって、僕は君をそんな子に育てた覚えはないんだけど」
「17であなたの息子になったもんで、俺も大して育ててもらった覚えはないですけどね」
透は聞いたことのないような憎まれ口を桜田社長に叩いている。だからこそふたりはちゃんと“家族”なのだと思えた。微笑ましくて思わず顔が綻んでしまう。
居心地が悪くなったのか、透は早々に席を立ち唯花を連れて会議室を辞した。
「そういえば、システム管理部の不正ってなんだったの?」
食事を終え、ソファーに座る透の為にコーヒーを入れながら唯花は尋ねた。
あの後、職場のメンバーから好奇の目でみられつつも鋼の精神力で仕事を終えた唯花は、透と待ち合わせをしてふたりで唯花の家まで帰ってきた。ふたり並んで帰るのは初めてのことだった。
会社を出た途端に透に手を繋がれてドキドキしたが、不思議と周りの目は気にならなかった。
「経理システムにエラーが多発していた件だよ。システム管理部の女性社員が奥村さんとグルになって不正データを紛れ込ませていたらしい。エラーを発生させてあなたを困らせたかったみたいだ」



