彼は女性からの誘いは全て断っているらしい。
専務の娘である愛奈に対しても変わらないようだ。
透は唯花を見つけると、わざわざ席までやってきた。
「佐山さん、今お時間大丈夫ですか?」
「わかりました。打ち合わせコーナーでお話聞かせてください」
「ありがとうございます! 助かります」
彼はそう言うと目尻を下げて顔を綻ばせる。
元々甘めの顔つきがさらに花が咲いたように明るくなる。
屈託のない笑顔に(おぉ、眩しい……)と目を細めつつ唯花はノートパソコンを手に立ち上がった。
「では、あちらへ」
居室内にある衝立で軽く仕切られただけの打ち合わせコーナーに彼を案内する。
目前に透の爽やかな笑顔、後ろからは愛奈の怨嗟の視線という精神をゴリゴリと削られる状況のまま唯花は彼の質問に丁寧に答えた。
「佐山さんのせいで折原さんに近づけないんだけど」
それは退勤するためにビルの廊下を歩いている時のことだった。
自分のことを噂している声が聞こえてきて唯花は思わず足を止めた。
廊下の向こうで奥村を含んだ若い女性社員3人が立ち話をしている。他のふたりは愛奈の友人……というか取り巻きのようだ。
専務の娘である愛奈に対しても変わらないようだ。
透は唯花を見つけると、わざわざ席までやってきた。
「佐山さん、今お時間大丈夫ですか?」
「わかりました。打ち合わせコーナーでお話聞かせてください」
「ありがとうございます! 助かります」
彼はそう言うと目尻を下げて顔を綻ばせる。
元々甘めの顔つきがさらに花が咲いたように明るくなる。
屈託のない笑顔に(おぉ、眩しい……)と目を細めつつ唯花はノートパソコンを手に立ち上がった。
「では、あちらへ」
居室内にある衝立で軽く仕切られただけの打ち合わせコーナーに彼を案内する。
目前に透の爽やかな笑顔、後ろからは愛奈の怨嗟の視線という精神をゴリゴリと削られる状況のまま唯花は彼の質問に丁寧に答えた。
「佐山さんのせいで折原さんに近づけないんだけど」
それは退勤するためにビルの廊下を歩いている時のことだった。
自分のことを噂している声が聞こえてきて唯花は思わず足を止めた。
廊下の向こうで奥村を含んだ若い女性社員3人が立ち話をしている。他のふたりは愛奈の友人……というか取り巻きのようだ。



