「それより、奥村さんと食事にいくんじゃ……」
「それにしたって近づき過ぎだ。勘違いされたらどうするんだよ。無防備すぎる。いつもあんな風にふたりで仕事してるの? そもそもあなたが連日残業する必要ある?」
こちらの話を無視し続けた上に畳みかけられ、無性にむかむかしてきた。
真面目に仕事をしているだけなのに、何でこんな風に一方的に言われなければならないのだろう。
(自分は奥村さんと食事に行くはずだったんでしょ。私のことなんかほっといてくれればいいのに)
唯花はついに我慢できなくなった。
「折原君、奥村さんのところに戻ったら?」
「唯花さん?」
「きっと、まだ待ってるわ。彼女と付き合うの? いいじゃない。ふたりお似合いだし」
口に出した途端自分の心にひびが入った気がした。
本当はこんな風にいいたくない。でも止められなかった。
「――本気で言ってる?」
至近距離で低い声が聞こえる。
「……そもそも私達は“お似合い”じゃなかったから」
唯花は喉に貼りついた声を絞り出すように言うと、目の前の整った顔がみるみる歪んでいくのがわかった。
「……あぁ、クソ、もう全部、どうでもよくなりそうだ」
透の瞳の中に、冷たく寂し気な光が浮かぶ。
唯花が息を飲んだ瞬間、顔の横にあった透の両手が素早く後頭部に回り、固定された。
「それにしたって近づき過ぎだ。勘違いされたらどうするんだよ。無防備すぎる。いつもあんな風にふたりで仕事してるの? そもそもあなたが連日残業する必要ある?」
こちらの話を無視し続けた上に畳みかけられ、無性にむかむかしてきた。
真面目に仕事をしているだけなのに、何でこんな風に一方的に言われなければならないのだろう。
(自分は奥村さんと食事に行くはずだったんでしょ。私のことなんかほっといてくれればいいのに)
唯花はついに我慢できなくなった。
「折原君、奥村さんのところに戻ったら?」
「唯花さん?」
「きっと、まだ待ってるわ。彼女と付き合うの? いいじゃない。ふたりお似合いだし」
口に出した途端自分の心にひびが入った気がした。
本当はこんな風にいいたくない。でも止められなかった。
「――本気で言ってる?」
至近距離で低い声が聞こえる。
「……そもそも私達は“お似合い”じゃなかったから」
唯花は喉に貼りついた声を絞り出すように言うと、目の前の整った顔がみるみる歪んでいくのがわかった。
「……あぁ、クソ、もう全部、どうでもよくなりそうだ」
透の瞳の中に、冷たく寂し気な光が浮かぶ。
唯花が息を飲んだ瞬間、顔の横にあった透の両手が素早く後頭部に回り、固定された。



