「やっぱり居たか」

「……氷砂真(ひさま)?」



夜の10時頃。女子寮2階。

私が居る部屋のベランダから氷砂真が侵入してきた。



「何しに来たのよ!!」

「そんなの決まってんだろ。
柚阿間(ゆあま)を助けに来たんだよ。
右足首、まだ痛いだろ?」



2日前。

体育の授業中に私は右足首を捻挫していた。



「…大丈夫よ! ほら!!」



…痛っ!!!

勢いよく床から立ち上がり歩いてみると、右足首に痛みが走りよろける私。



「大丈夫じゃないな」



そんな私を体全体でしっかり受け止めた氷砂真。



「おんぶしてやるから、俺の背中に乗れ」

「…嫌よ……」

「嫌だろうな。でも我慢しろ。
早くここから離れないと」

「私を置いて行けば良い!!
早く行って!!!」

「…ゾンビに襲われたいのか?」

「こっちのセリフよ!!
私をおんぶしながら逃げるなんて…」



正気なの?



「…俺を心配してるのか?」

「心配なんてしてないわよ!!
氷砂真に何かあって、家族の人から恨まれたくないのよ!!!」