好きとか愛とか

壱矢と付き合ってるのがどんな女なのか確認するために見ていたのだ。

 「うん、付き合ってる」

ここで、あれはただのふりで本当は付き合ってないなんて言ったら、壱矢の顔に泥を塗ることになる。
仲良くしてくれている子に嘘をつくのは気が進まなさすぎるけれど、もう後戻りが出来ないため腹をくくって嘘を吐いた。

 「なんで言ってくれなかったのーっ」

 「ごめん」

今朝決まった取り決めだから…、は絶対禁句。
私のごめん、には、嘘をついてごめんの意味しか含まれていない。

 「そりゃ誰の告白も受けないわけだよー。壱ちゃんが相手じゃ太刀打ちできないもんねぇ。そっかそっかぁ。でもあの奥津先輩とはねぇ。どこでどう知り合ったの?」

 「恥ずかしいから秘密」

適当な嘘も思い付かず、どんな設定も頭に浮かばない私はとりあえず黙秘することに。
親同士が知り合いという半ば本当のことを織り混ぜようとしたが、どう転ぶか分からないため止めておく。
もしボロが出て義理の家族であることがバレたら、それこそ大事になってしまう。
こんな質問も想定していなかった私は、余計に相手の興味をそそる返しをしてしまった。
コイバナは女の好物と聞くけれど、こんなぐいぐい来るものなんだ…。
騙しきれる自信が早速に崩壊した。

 「それより、安倍さんこそどう?荻野先輩と」

私の話をこれ以上されたら絶対バレてしまう。
壱矢と細かなことを打合せするまではこの話題を避けるべく、安倍さんの話に切り替えた。

 「んー、実は告白しようかなって、思っててね」

 「そうなんだ」

 「でも先輩受験生でしょ?邪魔したくないなぁとか思っちゃって、色恋とか受験生にはご法度って言うか…」

え、それなら壱矢は完全に駄目路線では?