そう考えてみて、壱矢の隣に自分とは違う女性の姿を当てはめてみる。
壱矢に似合いそうな女性を思い浮かべ、手を繋いで体を寄せ────
途中でやめた。
なんだか気分が悪い。
壱矢の隣に誰か違う女性をあてがっただけなのに、どういうわけか胸がモヤモヤして苛立ちに似た感覚を覚えた。
私はすぐさまその想像を振り払い、深呼吸して気持ちをリセットする。
「モテすぎて心配ってなに、ウケるんだけど」
歩いてしばらく、進学棟への通路の手前で壱矢が堪えきれずに吹き出した。
指摘されると恥ずかしくなって、それでなくても触れられたくない私は壱矢の胸元に拳を突き立てて膨れる。
「そんなに笑わないでください。咄嗟の事で打ち合わせも何もなくていっぱいっぱいだったんですから」
「ごめんごめん。壱がかわいすぎて。ぁはははは」
肩を揺らせ、喉を震わせて、笑いを堪えながら私の頭を撫でる。
かわいいなんて言われて、反応している自分がいるのはどうしてなんだろう。
何度も言われてきてるのに、嫌悪しかなかったのに今は嫌な思いは一切なかった。
ただ、誰にでも言っていることなんだろうと、そのことにひっかかるだけで…。
「てことで、彼女役引き続き頼むな?」
「あんな感じでよかったんでしょうか?」
「上出来」
じゃあまた帰りにここで、そう言った壱矢が自分の学部へと歩いていった。
私は壱矢の姿がいなくなるまで、何となく見送ってから自分の教室へ向かった。
しかし、疲れた。
慣れないことをするのは、こんなにも体力と気力を消耗するものなのか。
それが不馴れな彼女の役なんてものだから、特別気疲れしてしまった。
まだ授業も始まっていないのに、一日授業をみっちり受けたくらいの疲れを感じている。
壱矢に似合いそうな女性を思い浮かべ、手を繋いで体を寄せ────
途中でやめた。
なんだか気分が悪い。
壱矢の隣に誰か違う女性をあてがっただけなのに、どういうわけか胸がモヤモヤして苛立ちに似た感覚を覚えた。
私はすぐさまその想像を振り払い、深呼吸して気持ちをリセットする。
「モテすぎて心配ってなに、ウケるんだけど」
歩いてしばらく、進学棟への通路の手前で壱矢が堪えきれずに吹き出した。
指摘されると恥ずかしくなって、それでなくても触れられたくない私は壱矢の胸元に拳を突き立てて膨れる。
「そんなに笑わないでください。咄嗟の事で打ち合わせも何もなくていっぱいっぱいだったんですから」
「ごめんごめん。壱がかわいすぎて。ぁはははは」
肩を揺らせ、喉を震わせて、笑いを堪えながら私の頭を撫でる。
かわいいなんて言われて、反応している自分がいるのはどうしてなんだろう。
何度も言われてきてるのに、嫌悪しかなかったのに今は嫌な思いは一切なかった。
ただ、誰にでも言っていることなんだろうと、そのことにひっかかるだけで…。
「てことで、彼女役引き続き頼むな?」
「あんな感じでよかったんでしょうか?」
「上出来」
じゃあまた帰りにここで、そう言った壱矢が自分の学部へと歩いていった。
私は壱矢の姿がいなくなるまで、何となく見送ってから自分の教室へ向かった。
しかし、疲れた。
慣れないことをするのは、こんなにも体力と気力を消耗するものなのか。
それが不馴れな彼女の役なんてものだから、特別気疲れしてしまった。
まだ授業も始まっていないのに、一日授業をみっちり受けたくらいの疲れを感じている。

