好きとか愛とか


 「そっか、分かった。気を付けろよ?」

それには答えずリビングを出た。
自分でも徹底しすぎているとは思う。
けれど、中間が分からない。
分からないなら拒絶が一番楽だと思えた。
自分のできが悪くなることで、妹の評判がよくなり、母がこの家でのポジションを確保できるなら、それでいい。
私の評判が悪くなって母親の質を疑われても、奥津家の兄妹から慕われれば母にはそれで満足なのだから。
私さえ道をそれる行いさえしなければ、ただの無愛想で可愛げの無い娘が続くだけだ。
ただ、それだけのこと。

なのに、まだ慣れない。
妹と私を比較する時の母の視線と空気には、どうしてもいたたまれなくなってしまう。
負担をかけたくないから自分の事は自分でしている。

弁当だってそうだ。
私が自分で作れば、その分の時間をあの兄妹に当ててやることができ、そうすれば母の株が上がる。
二人に好かれればこの再婚家族はうまく行くはずだから。
最初はそうやっていつか自分の分も作ってもらえたらと思っていたけど、タイミングを完全に逃してしまった。

 「要領悪いったら」

そう呟いた私は、自嘲した口元を引き締めてバスルームへ。
他の家族が来る前に歯磨きを済ませなければ。
朝食を摂る前には洗顔など済ませているため、あとは歯磨きだけ。
家を出るまでの時間は学校へ行く支度をして、それから勉強をして暇を潰す。
さっさと家を出たいけれど、7時前だとさすがに早すぎる。
徒歩圏内の学校へあまり早くから出掛けると、それはそれで怪しい。
壱矢と重ならない時間を選んで家を出ることにしていた。