それが一番、帰りたくない理由だった。
母がどう反応するか、今の私には想像すらできない。
私を見て何も気付かなかったら?
怪我をしている私を見ても、どうして迎えに行かなかったのか、早退したあと今の時間までどこへいっていたのか問い詰められたら?
もしくは、怪我さえ見つけてもらえなかったら?
そんな辛いことはない。
義理の家族の舵取り気分の母なら、充分あり得る話だ。
だからといって今日の出来事を話す気もない。
一生知られなくていい。
伝えた後の母がどんな顔をするかは、伝えずにこのまま帰宅したときのものよりはるかに想像がしやすい。
どんな態度に出るかも、分かっている。
同情だ。
けれどそれは、たんなる腫れ物だ。
そんなこと、私は望まない。
同情など、何より嫌だった。
私の身に起こったことを勝手に見積もられてたまるか。
見積もった分だけ寄り添うなんて、冗談じゃない。
同情は、優しくしなければという無意識の強迫観念から生まれる不自然な行為。
可哀想だからという哀れみだ。
結果どうなるかも、素通しだ。
どちらにしても母の出方が予測と検討の域をでないため、素直に帰宅する気にはなれなかった。
だったら、一番可能性が高い方を選ぶ。
立ち止まった私は繋がっていた壱矢の手を離し、一番大きな膝の絆創膏を剥がした。
ちりっとした痛みが走る。
「なにしてんだ壱っ」
次の絆創膏へ伸ばした手が、壱矢によって阻まれる。
両手が拘束された。
「……言わないで、くれますよね?」
「壱…」
気付かれるのか気付かれないのか、そんな駆け引きみたいな感情で帰れるわけがない。
私が今心から望むのは、今日をなかったことにすること。
変な不安に苛まれるなら、いっそ何もかも今日一日空っぽにしてしまえばいいのだ。
私の怪我にも気付かず義理の妹を優先するか、それと腫れ物扱いか、前者と後者なら前者の方がダメージは少ない。
ルーティーンでイレギュラーじゃないから。
母がどう反応するか、今の私には想像すらできない。
私を見て何も気付かなかったら?
怪我をしている私を見ても、どうして迎えに行かなかったのか、早退したあと今の時間までどこへいっていたのか問い詰められたら?
もしくは、怪我さえ見つけてもらえなかったら?
そんな辛いことはない。
義理の家族の舵取り気分の母なら、充分あり得る話だ。
だからといって今日の出来事を話す気もない。
一生知られなくていい。
伝えた後の母がどんな顔をするかは、伝えずにこのまま帰宅したときのものよりはるかに想像がしやすい。
どんな態度に出るかも、分かっている。
同情だ。
けれどそれは、たんなる腫れ物だ。
そんなこと、私は望まない。
同情など、何より嫌だった。
私の身に起こったことを勝手に見積もられてたまるか。
見積もった分だけ寄り添うなんて、冗談じゃない。
同情は、優しくしなければという無意識の強迫観念から生まれる不自然な行為。
可哀想だからという哀れみだ。
結果どうなるかも、素通しだ。
どちらにしても母の出方が予測と検討の域をでないため、素直に帰宅する気にはなれなかった。
だったら、一番可能性が高い方を選ぶ。
立ち止まった私は繋がっていた壱矢の手を離し、一番大きな膝の絆創膏を剥がした。
ちりっとした痛みが走る。
「なにしてんだ壱っ」
次の絆創膏へ伸ばした手が、壱矢によって阻まれる。
両手が拘束された。
「……言わないで、くれますよね?」
「壱…」
気付かれるのか気付かれないのか、そんな駆け引きみたいな感情で帰れるわけがない。
私が今心から望むのは、今日をなかったことにすること。
変な不安に苛まれるなら、いっそ何もかも今日一日空っぽにしてしまえばいいのだ。
私の怪我にも気付かず義理の妹を優先するか、それと腫れ物扱いか、前者と後者なら前者の方がダメージは少ない。
ルーティーンでイレギュラーじゃないから。

