気の強い女とはなんと哀れなことか。
駐在所を出るとき嫌というほど思い知らされた。

 「あまり無理しないで、泣きたいときは泣いていいのよ?ね?」

頭を撫でながらそう言う婦警さんは、まだ私を心配しているらしい。
違う、
そういうんじゃない。
無理なんかしてない。
隣で壱矢が婦警さんと話しているのを何気に聞きながら、彼女に植え付けてしまった私の我慢強さを心の中で否定した。

 「助けていただいてありがとうございました。ご迷惑をお掛けしました」

頭を下げてお礼を言うと、二人とも手を振って見送ってくれた。

私は無理なんかしてない。
今回の事に関しては、絶対そうだと言いきれる。
頬に手を当てて、涙の後を探すけれど、探すほども痕跡は残っていなくて、それがまた惨めな気持ちになった。
可愛らしい女の子なら、もっと泣いたのだろうか。
ああいうときは、もっと泣くものなんだろうか。

安心して力が抜けた私は、壱矢の背中に身を預けて確かに泣いた。
大声や大量の涙を流すというより、包泣きという感じではあったが、自分の中では結構な感情の崩落だった。
止めどなく溢れた涙はそう続くわけではなく、ドバッと派手に流れたあとは勢いを失って少し滲んだだけ。
二分もかからず涙が止まったというのが実状。