好きとか愛とか

突き飛ばされた時のものだろうか、露出している場所にはいくつか擦過傷ができていた。
全て浅く、絆創膏で処置できる程度のもの。
小学生のやん茶坊主代表といっても過言じゃない数である。
加えて打ち身も酷く、あちこちきしんで痛みが強かった。
だけどこの程度ですんだのは不幸中の幸いだ。

犯人はまだ捕まっていないけれど、いつか必ずこの人たちが捕まえてくれると信じたい。

 「ご家族に連絡して迎えに来てもらう?パトカーでも構わなければ送れるけれど、どうする?」

パトカーでなんて送られたら近所の人に何を噂されるか分からないし、途中で降ろしてくれるはずもない。
そうなれはわ親にもこの事がバレてしまう。
さすがに責められることはないだろうけど、今一つ確信ももてない。
義理の妹を迎えに行くと言って行かなかったことが、確信を鈍らせていた。
だからといって一人で帰るなんて選択肢もあり得ない。

 「………両親でないといけませんか?」

 「今回はことに及んでいないからご両親に知らせる義務はないけれど、こちらとしてはできるだけ保護者の方をお願いしたいわ」

 「すみません…お話した通りですので、両親は避けたいです」

再婚家族であることは、義理の妹を迎えに行くというところから話さなければ成立しない案件だった。
詳しい事までは話していないが、さすが場数を踏んだ大人と言ったところか、一を聞いて十を知る理解力で大体の事を読み取ったと思われる。
母が必死で構築している家族の輪に無意味な波立ちは立てたくない、そういう私の思いと意図は充分汲み取ってくれていた。 

 「そう…。でもパトカーで送れないとなると、誰かに迎えに来てもらわなければならないの。身内の方でどなたかいらっしゃる?」

どなたか、なんていわれて思い浮かぶのは一人しかいない。
間違っても体調の悪い祖母に連絡など出来ないし、祖母に知られれば母にも恭吾さんにも知らされてしまう。
それを覗いた誰かといえば、答えは必然的である。
さっき林でも真っ先に浮かんだ────