好きとか愛とか

私が行かなければずっと待ってるかもしれない。
もしかしたら壱矢が行くかもしれないけれど、でももし、あの男以外にも変質者がいたとしたらそいつとで食わしているかもしれない。
そしたら義理の妹が、私みたいな目にあう、かもしれない。
私は運良く助けられたけど、もしそうならなかったらもっと酷い目に遭ってしまう。
駄目だ、あんな思い、他の誰もしてはいけない。

　｢ふ、婦警さん、あの、ゎ、たし…ぎ理の、ぃもぅとを、そこ、へ、むか、えに来てたん、で、す。かぇっ、た、か、か、確、認した、ぃんですが…｣

今だ落ち着かない言葉の羅列。
しかし婦警さんはきちんと聞き取ってくれたらしく、私の未完全な言葉の後うんうんと何度も頷いてくれた。

　｢妹さんね、分かった。確認してみる。名前は？｣

　｢ぉくつ、ぁぃら…です｣

　｢おくつあいらさん、待ってね？｣

名字が違うのも、義理とつけたことで悟ってくれた。
学校の電話番号をスマホで検索し、すぐに電話をかけている。
車を降りて外へ出たのは、良くないことがあった時それをどう伝えるか逡巡するのを防ぐためなのだろうか。
ぼんやりした頭でそんなことを考えてみる。
ここからの角度では婦警さんの表情は見えない。

彼女は、
愛羅は無事だろうか…。

義理の家族で義理の妹。
なのに、こんなに気になるのはやはり一緒に住んでからある種の情が沸いたかもしれない。
口で言うほど無関心ではいられない自分の柔さが、憎らしいやら嬉しいやら分からなかった。
だらしなく後部座席にもたれていた私は、こちらに背を向けてしまった婦警さんを見つめた。
結果が分からないまままたされるのは嫌いだ。
心臓がドキドキする。
するとほどなくして、通話を終了させた婦警さんが車に乗り込んだ。