「妹の迎えに行かせるなんていわないでね。どっかの病院へ行くってことにして」
「分かってるわよ、大丈夫」
ご機嫌でアドレスメモリを繰り、久しく見ていなかった無邪気な顔を浮かべた。
私は椅子から立ち上がり、シンクへ食器を持っていく。
皿とコップを洗い、乾燥機へ入れたところで、電話をかける手を止めた母がこっちへ駆け寄ってきた。
頭にポンッと、母の手が乗る。
くしゃくしゃに撫でられた頭が、派手に左右に揺れた。
母にそうされた最後がしばらく前だった私は、懐かしさと嬉しさで泣きそうになってしまった。
「助かったわぁ。今日は壱の好きな揚げ出し豆腐用意しておくからねー」
瞬時に涙腺が引き締まる。
揚げ出し豆腐…、たったそれだけの言葉で、また孤独に突き落とされた。
揚げ出し豆腐…?
「美喜子さん。揚げ出しは愛羅の───」
「ありがとうお母さん。揚げ出し豆腐大好き。楽しみにしてるね。じゃあ行ってきます」
うるさい。黙れ壱矢。
うまくまとまったんだから波風立てるな。
本当は、揚げ出し豆腐なんか大嫌い。
母さんはそれを、すっかり忘れている。
義理の妹と間違えている。
また、胃が痛い…。
キリキリする胃を押さえ、こんな痛みに負けるなと強めに叩いた。
壱矢を素通りし、学校へ連絡を入れる母を視界の端に見届けてからリビングを出る。
すると、後ろから壱矢が急いでこちらへ向かってくる足音がした。
「壱っ、ちょっと待って」
廊下へ出たところて壱矢が私の肩を掴んだ。
そして自分の方へ振り向かせる。
「分かってるわよ、大丈夫」
ご機嫌でアドレスメモリを繰り、久しく見ていなかった無邪気な顔を浮かべた。
私は椅子から立ち上がり、シンクへ食器を持っていく。
皿とコップを洗い、乾燥機へ入れたところで、電話をかける手を止めた母がこっちへ駆け寄ってきた。
頭にポンッと、母の手が乗る。
くしゃくしゃに撫でられた頭が、派手に左右に揺れた。
母にそうされた最後がしばらく前だった私は、懐かしさと嬉しさで泣きそうになってしまった。
「助かったわぁ。今日は壱の好きな揚げ出し豆腐用意しておくからねー」
瞬時に涙腺が引き締まる。
揚げ出し豆腐…、たったそれだけの言葉で、また孤独に突き落とされた。
揚げ出し豆腐…?
「美喜子さん。揚げ出しは愛羅の───」
「ありがとうお母さん。揚げ出し豆腐大好き。楽しみにしてるね。じゃあ行ってきます」
うるさい。黙れ壱矢。
うまくまとまったんだから波風立てるな。
本当は、揚げ出し豆腐なんか大嫌い。
母さんはそれを、すっかり忘れている。
義理の妹と間違えている。
また、胃が痛い…。
キリキリする胃を押さえ、こんな痛みに負けるなと強めに叩いた。
壱矢を素通りし、学校へ連絡を入れる母を視界の端に見届けてからリビングを出る。
すると、後ろから壱矢が急いでこちらへ向かってくる足音がした。
「壱っ、ちょっと待って」
廊下へ出たところて壱矢が私の肩を掴んだ。
そして自分の方へ振り向かせる。

